7/9 チャコット ダンスキューブに記事が掲載されました!


『マリア・カラス〜踊る歌声』(Bプロ)の全貌が明らかに!

伝説の歌姫マリア・カラスの生涯を、パリオペラ座の美しい4人の女性ダンサーが表現する…この魅惑的なアイデアを着想したのは、前回のル・グラン・ガラで『トリスタンとイゾルデ』『ヴェーゼンドンク歌曲集』を振り付けたジョルジオ・マンチーニ。オペラや声楽曲に鋭い審美眼をもつマンチーニにとって、マリア・カラスは特別な存在で、彼女の人生もまた大きな創作のヒントになったという。

「イタリア人ですので19歳の頃からオペラに親しんできました。最初に聴いたのがマリア・カラスの『トスカ』で、色々聴いてみて、カラスの声は他の人とは全然違うことに気づき、夢中になって彼女の録音を聴き漁りました。カラスの声には、彼女の精神と内面のすべてが顕れています。普通の歌い方ではない。そのあと、35歳のときにアメリカ人の友人が「これを読んでほしい」とカラスの生涯について書かれた本を私にくれたのです。とても興味深く、今までのカラスのイメージと違うプライベートの不幸や辛さが記されていて驚きました。そこで、彼女の生涯を素材にバレエが作れるなと思ったのです。たまたま2年前にカラスのCDを買い、その本のことを思い出しました」

 振付のために選んだ曲はヴェルディ『椿姫』『イル・トロヴァトーレ』、ベッリーニ『夢遊病の女』『清教徒』『ノルマ』、グルック『オルフェオとエウリディーチェ』など。ベルカント、しかもベッリーニの曲が多く使われていることが特徴的だ。

「マリア・カラスのアリアを100曲くらい聴きましたが、ダンサーの性格とクオリティ、成熟の度合いに合わせて選曲しました。実際的に、スペクタクルの性格上ものすごく早いアリアは入れられなかったのです。アマンディーヌ・アルビッソンに似合う曲を探そうとすると、彼女にぴったりなのはひとつかふたつしかなかった。アマンディーヌは踊っているときに「強さ」を前面には出さない人です。彼女のもつ詩的な「弱さ」が、父親や恋人に捨てられたカラスの哀しみを表せると思いました。レオノール・ボラックは、カラスのキャリアの中でとても短かったけれど、エネルギーに溢れて前向きで、生きていることの喜びを感じている時期を思い起こさせました。エトワールになって、前しか見ていなくて、若いカラスが「これからいいオペラ歌手になるんだ」と未来を思い描いていた頃と重なるのです。オニール八菜は、カラスのメランコリックな面を表します。普段彼女はあまり目立たないようにしていて、踊りも美しくて素晴らしいものを持っているのに、それを前に出そうとしない。悲しみを秘めている感じが『オルフェオとエウリディーチェ』でのカラスの悲劇的な声と重なりました。そして、ドロテ・ジルベール…ドロテは今、黄金期にいると思います。夫からの愛も得て子供もいて、怖いものがないという境地を、彼女の踊りからは感じます」

 それぞれのパ・ド・ドゥではマチュー・ガニオ、ジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャン、オードリック・ベザールが相手役を踊る。男性ダンサーの役割としては「マリア・カラスが渇望したすべての男性です。夫、オナシス、ディ・スファノ(テノール歌手)、ヴィスコンティ、彼女のファン…一人の男にすべて入っていて、4人とも夢の中の男性なのです。カラスの人生では、幼少期にお父さんに捨てられたというのがベースになっているので、どのエポックにも父親の影が出てきます」

 カラスがオナシスに宛てた悲痛な愛の手紙を読むシーンも。これは実際にドロテ・ジルベールが舞台の上で朗読する。
「ドロテは映画にも出演していますから、演劇的な基礎は出来ているのです。この貴重な手紙は遺産としてもらっている人がいて、この作品のために手紙の権利を財団からいただきました。色々な準備に1年半ほどかかっています。手紙のシーンのあと、ダンサーが集まってマリア・カラスに感謝を捧げるように彼女の映像を囲みます。これは最晩年のリサイタル映像で、カラスは歌って喝采を受けているのですが、かなり悲しいイメージです」 エトワールになる前から実力を認めていたというマチュー・ガニオについては、「マチューがスジェに昇格するときの試験で審査員を務めたのですが、当時から彼は完璧主義者で、これという大きな特徴はなかったけれど、謙虚で音楽性と感受性に優れていました。そのまま誠実に踊り続けて、今一番いい時期にいると思います。ものすごく熱心に仕事をする人で、振付家の求めるもの全てに応えようとしてくれます。素晴らしい表現と美貌を持っていて、それだけではなくこちらの仕事を引き立たせてくれる。他の振付家との仕事も素晴らしいですが、私との仕事では特に素晴らしく、ダンサーである彼が一歩先を示してくれるようなところもあります。オペラ座の最も美しいダンサーたちと作品を作ることの出来る私は、とても幸福な振付家なのです」

(音楽・舞踊ライター 小田島久恵)

 


マチュー熱望により急遽上演!注目作が早くも日本上演!

■Aプロ (7/23、24)

“クロージャー” Closure (日本初演)
振付: ジュリアーノ・ヌネス
音楽: フランツ・シューベルト 即興曲集 D899
出演: レオノール・ボラック、マチュー・ガニオ

 

世界が注目する新進振付家ジュリアーノ・ヌネス作品、日本初登場!

注目はジュリアーノ・ヌネス振付『クロージャー』だ。ヌネスはブラジル出身、28歳の若き振付家。元オペラ座のエトワール、マリ=アニエス・ジロに才能を見出され、彼女と踊ったデュエットがインスタグラムにアップされるやセンセーションを巻き起こし、いま世界中のディレクター、ダンサーから熱い視線を集めている。もちろん今回が日本初登場。斬新な身体の動きと美しい叙情性が一体となった新鋭ヌネスの作品世界を踊るボラックとガニオがどんな表現を見せるのか、こちらも興味が尽きない。

ル・グラン・ガラはバレエの新たな潮流をいち早く目撃できる見逃せない公演だ。

(ダンスマガジン編集委員 浜野文雄)

 



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 昨年1月、オペラ座のトップダンサー5名により初公演が行われたル・グラン・ガラ。ジョルジオ・マンチーニ創作による『トリスタンとイゾルデ』と『ヴィーゼンドンク組曲』という日本初演の2作品で構成された珠玉のプログラムは、ダンサーたちから日本のバレエファンへのとても美しい贈り物だった。

 今夏、新たに3名を加え、よりパワーと魅惑に溢れるル・グラン・ガラ2019が開催される。世界中バレエ・カンパニーは数あれど、その王者たる存在がパリ・オペラ座。フレンチ・エレガンスを武器に、その華麗なる舞台を支えている芸術的にも技術的にも卓越した8名のダンサーたちが日本に集まって、世界でも類を見ないユニークで魅力的な公演を行うのだ。

 プログラムは2つ。Aプロはクラシック作品を中心に、ネオ・クラシックとコンテンポラリーがバランスよく散りばめられている。10作品中、3作品がルドルフ・ヌレエフの振付。複雑なステップの連続という超技巧を要求されながらも、オペラ座のダンサーたちが 詩情豊かに踊る姿を生のステージでみることのできる幸せ !  また、パリでは長らく踊られていないローラン・プティの作品『プルースト〜失われた時を求めて』からも、見応えのある2場面がプログラム入りしている。半角半睡の時間の男女のパ・ド・ドゥ、そしてチェロとピアノが奏でるエレジーにのせて闘う天使と黒天使のパ・ド・ドゥだ。これらにフォーサイスとプレルジョカージュの現代的な振付がスパイスをプラスし、まるでオペラ座の理想的な1シーズンを凝縮したようなAプログラム。これは見逃せない。

 Bプロの『マリア・カラスへのオマージュ』は目下、パリで創作が進行中である。ワーグナー熱から『トリスタンとイゾルデ』『ヴィーゼンドンク組曲』を生み出したG ・マンチーニ。今回は、彼のその歌声が心を捉えて離さないマリア・カラスをテーマにし、8名全員が参加する作品だ。心理描写を歌い上げる彼女のベルカントと表現力豊かなオペラ座のダンサーたちのぶつかりあいから生まれるシナジー効果が、観客の心を震わすに違いない。

 この作品と組み合わされているのは、やはり音楽が創作の重要な鍵を握るバレエ作品として知られるジョージ・バランシンの『ジュエルズ』。優美なフレンチ・スタイルで踊られる’’エメラルド’’は仏作曲家フォーレの、壮麗なロシアン・スタイルで踊られる’’ダイヤモンド’’は露作曲家チャイコフスキーの曲が使われている。2018年のオペラ座再演の際にファーストキャストに選ばれたアマンディーヌ・アルビソンとユーゴ・マルシャンが、この公演でも’’ダイヤモンド’’ のパ・ド・ドゥを踊る。Bプログラムもまた必見の豪華さなのだ。

 バレエの舞台を見慣れている人もいない人も十分に楽しめる心憎いまでの両プログラム。
世界最強のガラを見に行こう。

(在パリ・ジャーナリスト 濱田琴子)
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